| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-225  (Poster presentation)

東京の都市公園における食品廃棄物に集まるアリ群集と持ち去り速度

*保坂哲朗, 邸琳, 江口克之, 沼田真也(首都大学東京)

都市化は生息地の消失や分断、微気象の変化、土壌や大気の汚染などにより、多くの生物に負の影響を与える一方、このような環境に適応した一部の種の個体数を増大させ、新規な生態系(Novel Ecosystem)を作り出している。また、都市生態系は郊外などに比べて単位面積当たりのエネルギー投入量が大きく、大量の人工廃棄物や排出物が生じる系でもある。都市生態系における人工廃棄物の処理・分解過程の理解は、生態系サービスの観点でも重要である。
アリは人間の食品廃棄物に集まる動物の中でも重要なものの一つであるが、都市においてどのようなアリがどれくらいの速度で食品廃棄物を消費するのか、それらが生息地タイプによって異なるのかは、あまり調べられていない。著者らは、東京都内の都心(区部)および郊外(多摩)にある10の公園内の樹林地、芝地、舗装地90ヶ所において、ポテトチップス、クッキー、ハムなどの食品を18 g(各6.0 g)設置し、それらに集まるアリ種の同定および24時間後の食品残存量の測定を行った。
その結果、合計11種のアリが得られ、平均5.9 gの食品が持ち去られた。各種とも食品タイプによる出現頻度の違いは見られなかった。アリの種構成は都心-郊外、および園内の土地被覆タイプにより異なり、平均種数は樹林地が最も大きかった。一方、食品の持ち去り速度は都心-郊外では有意な差がなく、土地被覆タイプでは芝地で最も高くなった。樹林地における持ち去り速度は、芝地や舗装地と有意な差はなかった。食品の持ち去り速度はアズマオオズアリの存在と正の相関、アメイロアリの存在とは負の相関があったが、種数とは有意な相関はなかった。以上より、人工食品を利用するアリの多くは採餌ジェネラリストであることや、芝地や舗装地は樹林地に比べてアリの種数は少ないが食品持ち去り速度は大きく異ならないこと、食品の持ち去り速度には種数より特定のアリの在不在の影響が大きいことが分かった。


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