| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-227 (Poster presentation)
近年発達のいちじるしい情報科学技術は生態学における応用の可能性を秘めているが、いまだじゅうぶんに活用されているとはいえない。生態学は研究対象の時空間スケールが大きいからこそビッグデータ解析などの情報科学の助けを得ることが重要だが、現時点ではその活用事例は乏しいといえる。そこで本研究は、生態学の研究テーマとして古くからなじみ深い植物の季節変化の解明を例に、ビッグデータ解析の有用性を例証することを目的とした。
本研究で用いたのは、ビッグデータを用いてシミュレーション予測を改善する手法であるデータ同化という情報科学技術であり、その中でも特に、非連続な現象によって支配されることの多い陸上生態系の法則解明に適した粒子フィルタとよばれる技術である。粒子フィルタは、大型計算機を計算資源として用いることで、非連続な現象を明示的に再現できることが特徴である。従来、植物の季節変化の予測には積算温度を用いることが一般的であったが、積算するための基準値は、おおざっぱに決められることが多かった。本研究では人工衛星ビッグデータを用い、日本全域の落葉広葉樹林の展葉・落葉タイミングの定量的な最適化を行うことで、従来の手法では得られない知見を示すことができた。
生態学の研究に有用なビッグデータ自体を創出する情報科学技術として、ディープラーニングがある。リモートセンシングなどで得られる画像データが生態学に利用されて久しいが、その解析は、各ピクセルの情報のみを用いた空間0次元のものが主流であった。ディープラーニングにより、画像にふくまれる形状やテクスチャという空間2次元情報を明示的に扱うことが現実となる。これにより、植物タイプの自動判別などの革新が期待され、生態学の発展に寄与すると考えている。