| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-230  (Poster presentation)

ブロッキングプライマーは希少種を検出できるか? -ボルネオ島塩場の環境DNA-

*石毛太一郎(東京農業大学ゲノム), 松林尚志(東京農業大学)

 野生哺乳類の生息状況調査は、多大な労力と費用が必要であることに加え、目視や画像による種同定には高度に専門的な知識が必要だった。近年、環境中(水や土壌)に存在する複数種の生物由来のDNAである環境DNAを解析する方法「環境 DNA メタバーコーディング」が開発され、動物園プールや亜寒帯林の池などの止水環境から陸生哺乳類を検出することができるようになった。我々は、2016年8月にボルネオ島マレーシア・サバ州デラマコット商業林の4か所の塩場(半止水環境)から各3~4地点での環境DNA解析の結果、オランウータンを含む6種の絶滅危惧種を検出した。しかし、多くの塩場で最優占種である大型のシカ・サンバーが80%以上を占めているため、マイナー種をマスクしているのではないかと考えられた。
そこで我々は、サンバーのDNA増幅阻害をするためにブロッキングプライマーを作成し、塩場の環境DNAを再解析した。
 サンバーのブロッキングプライマーは、3’プライマー側に設計した。2016年8月にボルネオ島マレーシア・サバ州デラマコット商業林の4か所の塩場について、MiMammal プライマーのみ、MiMammalプライマーおよびブロッキングプライマーにより12S ribosomal RNAの一部を増幅、次世代シーケンサーにより解析した(Nodai eDNA Pipeline: http://www.nodai-genome.org/MiAnimal/)。その結果、全ての地点でサンバーの検出を減少させることに成功した。また、ムササビの仲間を検出した。さらに、2地点のみリード数を増加させたところ、1地点でテナガザルの仲間を検出した。マイナー種を検出するにはブロッキングプライマーだけでなくリード数を増やす必要が示唆された。


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