| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-233  (Poster presentation)

標津湿原の地下水位と水質

*神田房行(北方環境研究所), 小野哲也(標津町教育委員会), 標津高等学校生徒達(北海道立標津高等学校)

標津湿原は北海道東部標津川とポー川に挟まれた地域に形成された湿原で、ヌマガヤ群落からなる中間湿原やカラフトイソツツジ-ガンコウランからなる高層湿原が大きな面積を占めている。ここは戦後の開発で側溝が掘られポー川へと排水され、近年はトドマツやシラカンバが入り込んでおり、早急な保全対策が求められる湿原である。筆者らは2010年から植生や地下水位の調査を行ってきた。今回は湿原の地下水位や水質の調査結果を報告する。地下水位と水質を調べるために湿原の49ヶ所に地下水位測定のための塩ビ管を設置した。また5箇所に自動水位測定装置を設定した。
植生タイプと地下水位との関係を調べるために、植生タイプ毎に地下水位調査結果をまとめてみた。その結果、高層湿原が最も地下水位が地表 面に近いところにあり、平均で16.7cmであった。中間湿原は28.11cmで高層湿原よりかなり低い値となった。低層湿原は中間湿原よりやや低く、31.27cmであった。 樹林は最も低く、44.79cmとなった。湿原の地下水の水質では、全体的にCODが高いが、BODが低いので大きな問題ではないと思われる。pHも全体的に低く、酸性であることを示しているが、立地のほとんどが高層湿原や中間湿原であるので、特に問題はないと思われる。 全窒素やリン酸イオン等も殆どが検出されない濃度であるので全体的には特に問題はないが、数箇所で高い値が検出されたのは注意を要すると思われる。特に地点32 の全窒素濃度が25mg/Lと突出して大きな値であっ た。また塩素イオンも575.9mg/Lと、全調査地点で最も高かった。ここはリン酸イオンも高濃度で1mg/L 検出された。この地点のすぐそばにはホタテの貝殻の処理工場があり排水の影響がないかなど、今後の調査と環境保全対策の検討が望まれる。その他、側溝の一部埋め立てによる止水対策も緊急の課題である。


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