| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-235  (Poster presentation)

イノシシの成長パターンと捕獲情報管理への応用

*横山真弓, 高木俊, 栗山武夫, 東出大志(兵庫県立大学)

イノシシ(Sus scrofa)は、全国的に急激な個体数の増加と分布域の拡大が進んでいる。農業被害や市街地への出没被害なども深刻化し、捕獲促進が全国的に行われているが、本種に関する生態学的情報が限られていることから、科学的な根拠に基づく計画的な捕獲が実施できない。現行の捕獲の問題として、1)行政的に行われる許可捕獲の多くが幼獣を中心とした捕獲である可能性が高く、個体数を減少させる効果が低いこと、2)捕獲報奨金の増額により、捕獲報告の不正などが後を絶たず、捕獲情報の精度に影響が出ていることなどが挙げられる。捕獲数は個体数推定を行う上で不可欠であるため、正確な情報が求められる。また、捕獲位置や、性比、幼獣・成獣の区別など捕獲とともに得られるべき情報も個体群の動向を把握するうえで重要であるが、現状では収集できていない。これらを収集する仕組みづくりが急務である。
本研究では、画像から幼獣・成獣を判別する仕組みを構築することを目的とし、以下の2点を実施した。1)捕獲個体の実測値から成長パターンを分析し、0歳、1歳、成獣の区別の可能性を検討する。2)画像のディープラーニングの手法を活用し、対象動物のオブジェクト判定とそれに続く対照オブジェクトを利用したピクセル当たりの距離推定を行い、体サイズの予測を試みた。1)においては、捕獲した670個体の体重、体長、体高、後足長を用いて、雌雄別に成長曲線(von Bertalanffy equation)に回帰させ、判別ポイントを分析した。体サイズから6か月齢以下であれば幼獣の判別確率は90%以上となり、幼獣・成獣を判別できたが、6~11か月齢では、50%程度にとどまった。2)の画像解析では、対象個体を囲むバウンディングボックスを発生させることにより、全長と体高を推定することが可能となった。この2つを組み合わせ、画像から体サイズを推定し、幼獣と成獣の判別が可能な時期や判別ポイントなどを明らかにした。


日本生態学会