| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-237  (Poster presentation)

日本の生物多様性地域戦略における多様な主体の参加と伝統知・地域知の役割

*小川みふゆ(東大・総合文化), 奥井かおり(東大・総合文化), 今井葉子(筑波大・システム情報), 曽我昌史(東大・農), 吉田丈人(東大・総合文化)

自然との関わりにおいて用いられる伝統的知識(伝統知)や地域に特有の知識(地域知)は、生態系管理において一定の役割をもっていると考えられている。しかし、日本の生態系管理に関する伝統知・地域知を全国レベルで体系的に調査された例はなく、生態系管理の手法として参照できる状態にない。

生物多様性地域戦略は、都道府県又は市区町村の区域内における生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画である。とりわけ市区町村の生物多様性地域戦略には、地域に密着した生態系管理の取組が記載されている。本研究では、地域の取組みの中で伝統知・地域知がどのように扱われているか、また、伝統知・地域知の保持者である多様な主体が生物多様性地域戦略の策定にどのように関わっていたかを明らかにすることにより、生態系管理における伝統知・地域知の利用の実態を明らかにすることを目的とした。

2016年4月までに生物多様性地域戦略を策定した67の市区町村を対象に、アンケート調査を実施するとともに、生物多様性地域戦略の記載内容を分析した。アンケートにより、自治体職員より275票(回収率99%)、策定委員会委員より296票(回収率34%)の回答を得た。伝統知を使った取組として「伝統的な作物の栽培」、「伝統的な水田の形態(棚田・縁田など)」など、地域知を使った取組として「地域独自の農産物認証制度に乗っ取った農業」、「モニタリングに基づいた里山やため池の管理」、「コリドーやビオトープの設置における地域独自のノウハウ」などがあった一方で、伝統知や地域知を「活用していない」という回答も一定数あった。

アンケートは、大山耕輔氏・小田勇樹氏(慶應大・法)、高橋康夫氏(IGES)と共同で作成し、(独)環境再生保全機構環境研究総合推進費S-15のガバナンスワーキンググループとして実施した。


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