| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-239  (Poster presentation)

シカ・イノシシの狩猟データからみた密度指標の経年変化分析

*高木俊, 栗山武夫, 東出大志, 横山真弓(兵庫県立大学)

直接観察の困難な野生動物では個体数動態や分布状況の把握のために、相対的な密度を反映する指標(以下、密度指標)の観測が行われる。例えば、日本各地で分布拡大や個体数の増加が報告されているニホンジカ(以下シカ)では、糞粒・糞塊密度、目撃効率、捕獲効率などの密度指標をモニタリングすることで、生息状況の把握が行われている。これらの指標は、より直接的な密度の観測値である区画法での発見密度と相関関係が見られることから、密度指標としての妥当性がある程度検証されているものの、積雪など環境変動の影響を受けることも指摘されており、指標の時間的変化や地理的勾配をそのまま密度の相対的な違いとして解釈可能かどうかには注意を要する。
本研究ではシカ・イノシシの個体数推定や生息状況モニタリングに広く用いられている密度指標である、銃猟時の目撃効率(単位人日あたりの目撃頭数、2002~2016年)と狩猟わなによる捕獲効率(単位わな日あたりの捕獲頭数、2005~2016年)に着目し、兵庫県内の狩猟メッシュ(約5km)ごとの時系列動態の分析を行った。動的時間伸縮法(DTW)による時系列動態の分類の結果、シカではおおむね5~15km程度の空間スケールで時系列動態の空間パターンが見られ、分布拡大地における増加傾向はどの密度指標でも検出されたが、目撃効率は冬季の積雪によって大きく年変動することが示された。イノシシでもおおむね5~15km程度の空間スケールで時系列動態の空間パターンが見られたが、県内の広域で同調して密度指標が高く観測された年があった。密度指標の変動が個体数の変動によるものなのか、環境変動や行動変化などに伴う指標の観測されやすさ(発見されやすさ、捕獲されやすさ)によるものかどうかは、単一指標の分析だけからは判断が困難であり、複数指標の比較や、捕獲と独立した調査との組み合わせが必要といえる。


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