| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-242 (Poster presentation)
全国的にシカ・イノシシの生息数増加や分布拡大が急速に進んでおり,それに伴う被害が深刻な課題となっている.そこで環境省は2013年に「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」においてシカ・イノシシの個体数を10年後の2023年度までに半減する目標を掲げた.科学的根拠に基づく個体数管理の実施においては,対象種の密度(個体数)のモニタリングが必要であり,全国的な個体数の動向把握に際しては捕獲率や捕獲数が密度指標として利用されている.しかし,これらの捕獲密度指標の精度について検証した事例は少ない.また,シカでは捕獲密度指標以外に,糞塊数や糞粒数などの痕跡が密度指標として利用されており,その有用性も報告されているが,イノシシにおいては痕跡密度指標が確立されていないため,広域的な生息密度の把握が難しい現状がある.そこで本研究では,自動撮影カメラによる推定生息密度との比較から,イノシシの痕跡密度指標としての掘り返し跡・擦り跡の有用性と,シカ・イノシシにおいて現状用いられている痕跡・捕獲密度指標の精度を検討することを目的とした.自動撮影カメラは2017年9月から2018年1月に兵庫県内の8地域においてそれぞれ約1ヶ月間30台をランダムに設置,同じ地域で2017年10月~12月にイノシシの痕跡調査を実施した.自動撮影カメラの撮影データからRESTモデル(Nakashima et al. 2017)に基づいて算出された推定生息密度と,イノシシ痕跡密度,調査地域近隣における2017年度のシカ痕跡密度,および2016年度の捕獲密度指標との比較を行った。