| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-243  (Poster presentation)

人工林伐採地での広葉樹の保持は鳥類による害虫捕食圧を増加させるか?ダミーイモ虫を用いた検証の試み

*河村和洋(北大院・農), 山浦悠一(森林総研・植生, ANU), 雲野明(道総研・林試), 山中聡(森林総研・北海道), 佐藤重穂(森林総研・北海道)

 近年、生物多様性および生態系サービスの保全に配慮した林業として、主伐時に生物にとって重要な要素を残す保持林業が世界的に注目されている。現在、北海道の道有林において、トドマツ人工林主伐時に、林内に混交した広葉樹や成長したトドマツ植栽木の一部を残す実証実験が行われている。保持される広葉樹が増加すれば鳥類密度が増加し、結果として鳥類の食葉性昆虫に対する捕食圧も増加する可能性がある。そこで、粘土製のイモ虫模型(ダミーイモ虫)を伐採後に植栽された幼木に設置し、捕食痕(くちばし痕)を確認することで、人工林主伐地での広葉樹の保持と鳥類の害虫捕食圧(ダミーイモムシの被食率)の関係を調べている。
 調査は2015年から2017年にかけて行った。当実証実験区では、全ての樹木を伐採する皆伐区、1 haあたり10・50・100本の広葉樹を単木で残して伐採する単木少量・中量・大量保持区、60 m四方の成長した人工林パッチを残して伐採する群状保持区、人工林の一部をパッチ状に伐採する受光伐区の6つの処理がされており、各処理にそれぞれ3回の繰り返しがとられている(受光伐のみ2回の繰り返し)。2015年には伐採から1年経過した各処理区を1箇所ずつ、2016年には伐採から1~2年経過した各処理区を2箇所ずつ、2017年には伐採から1~3年経過した各処理区を3箇所ずつ調査した(計17箇所)。約5~8 haの各処理区に25 m間隔(2017年は35 m間隔)で、約100個(2017年は約55個)のダミーイモ虫を6月下旬に設置し、1週間後の7月上旬に捕食痕を確認した。
 全伐採区の平均被食率は、2015年には7.1%、2016年には6.1%、2017年には7.7%であった。予想に反して、保持される広葉樹量が増加するほど鳥類による捕食圧が増加するというパターンはみられず、各調査地における結果も年によって大きく異なっていた。今後数年間は調査を続け、伐採地での樹木の保持が鳥類による害虫捕食圧に及ぼす影響を検証していく予定である。


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