| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-250  (Poster presentation)

ニホンジカの生息密度と植生被害タイプの関係

*松本直輝, 笠木哲也(公立鳥取環境大学)

近年、全国的にニホンジカ(シカ)の分布が拡大傾向にあり、森林動態に影響を与える可能性が指摘されている。鳥取県では、2008年頃からシカによる農林業被害が急増した。また、県西部地域への分布拡大傾向が見られ、中国地方で最高峰の大山への侵入も懸念されている。
シカが採食する植物の嗜好性は地域によって異なるが、鳥取県におけるシカ個体群の採食特性や植生被害の現状は未解明である。本研究ではシカが急速に分布を広げている鳥取県東部地域におけるシカの採食特性を明らかにするため、糞塊密度、樹皮剥皮、枝葉食害、ササ食害の状況を調べた。鳥取県東部の森林エリア6×4kmを調査エリアとし、10×10mのプロットを128個設置した。
シカによる植生被害は枝葉食害から始まり、ディアラインが形成され、その後にササ食害、さらに樹皮剥皮という順序で森林の植生被害が進行する傾向が見られた。
樹皮剥皮に対する選択性(Ivlev)はニガキ(0.84)、ウリカエデ(0.74)、リョウブ(0.74)、ハイイヌツゲ(0.61)、マルバアオダモ(0.59)、アラカシ(0.55)が高かった。また、枝葉食に対する選択性は、ムラサキシキブ(0.37)、ミツバツツジ(0.36)、エゴノキ(0.30)、ハイイヌツゲ(0.29)、ヤマツツジ(0.26)、ウスノキ(0.23)が嗜好性が高いと推測された。
アカマツ林、ナラ林、落葉広葉樹林、常緑広葉樹林、人工林のうち、人工林の樹皮剥皮面積率が他と比べて高かった。また、枝葉食痕の発生率は常緑広葉樹林が他の森林と比較して低かった。シカによる食害の進行パターンは森林タイプと森林を構成する樹種によって大きく変化する可能性が示された。


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