| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-252  (Poster presentation)

ドローン搭載熱赤外カメラによる大型哺乳類調査: 鳥取砂丘周辺における個体数の季節変化

*伊藤健彦(鳥取大学), 宮崎淳志(京都大学), 小山里奈(京都大学), 鎌田季紗(鳥取大学), 永松大(鳥取大学)

赤外線カメラを搭載した小型無人航空機(UAV, ドローン)観測は、開空度の高い環境での哺乳類の検出や高精度の頭数推定を可能にしたが、森林では樹冠部が動物検出を困難にする。疎林を含む地域でのドローン観測の有効性を評価するために、草原化・森林化が進む鳥取砂丘周辺で、熱赤外カメラによる上空からの動物検出と種判別を試みるとともに、大型哺乳類の検出頭数を落葉樹の展葉期と落葉期で比較した。対象区域は、観光砂丘に隣接する鳥取大学の敷地内(約1km2)であり、海岸から砂地、草地、落葉樹のニセアカシアと常緑樹のクロマツが優占する森林、実験圃場へと植生・土地利用が変化する。上空からの熱画像の形状からニホンジカとイノシシの判別ができることを確認した後、展葉期は2017年6月(14日間)と8月(15日間)に、落葉期は10月末から11月(13日間)に、夜間に1日1回45–75分間、対象区域全域の観測を実施した。調査期間全体では、1回の観測で最大8頭の大型哺乳類が検出され、検出された哺乳類のうち種判別が成功した割合は、最低の6月で86.3%、8月は100%だった。大型哺乳類合計とシカとイノシシの種別の検出頭数には月による有意な差は認められず、どの月もシカ(2.57±0.26頭/回/km2, 全期間平均±SE)がイノシシ(0.38±0.12頭/回/km2)より多かった。両種とも木本が近くに存在する場所で確認されることが多かったが、展葉期でも落葉期に比べ検出頭数が低下しなかったことから、本地域では展葉期でもドローン観測が大型哺乳類の頭数推定に有効だと考えられた。ただし、調査日間での検出頭数には変動があり、より高精度の頭数推定には、樹冠下で検出できていない影響と、対象区域外との移動の影響の評価が必要である。


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