| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
シンポジウム S07-5 (Presentation in Symposium)
日本は世界の中でも固有種の多い地域として知られており、「生物多様性ホットスポット」に選定されている。また国内では、例えば小笠原諸島の父島や母島、南西諸島の屋久島、奄美大島などの島嶼と共に、高山植物が生育する地域が、国内の生物多様性ホットスポットの上位にランクされている。その代表的な山域としては、北海道の夕張岳やアポイ岳、本州では南アルプスの北岳や赤石岳、さらに八ヶ岳や早池峰山などである。この固有の高山植物が多く分布する山域では、蛇紋岩やかんらん岩、石灰岩などの塩基性岩を基岩とする特殊な土壌が知られており、それが固有種の多いホットスポット地域の形成に関与した可能性がある。また当該地域には、個体数が少なく絶滅の危惧に瀕している植物も多いため、速やかな生物学的特性の評価や保全などが望まれる。
現在、このホットスポット地域の高山植物を中心に、研究の基盤となる標本資料の収集や、生物学的特性の理解や保全を視野に入れた化学成分や遺伝子の解析、栽培実験などを進めている。本講演ではそれらの研究から得られている知見について紹介したい。またホットスポット地域に分布する植物の特性(例えば固有性など)を検証するには、国内の他の地域をはじめ、国外に分布する近縁種などとの比較も重要であり、そのためには、国境を越えた共同研究が必要となる。その例として、演者が関わっている国際的な共同研究についても紹介したい。