| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


企画集会 T06-1  (Presentation in Organized Session)

騒音の広域的生物影響:鳥類群集を事例に

*先崎理之(国立環境研究所)

都市化、インフラストラクチャーの拡大、モータリゼーションの進行-拡大を続ける人為活動の副産物の一つに人為的騒音がある。騒音は今や世界中の陸海双方の生態系に蔓延しており、様々な野生生物への騒音の広域的な影響が懸念されている。しかしながら、従来の生物の生息環境の広域評価では、分断化等の景観構造の影響ばかりが注目され、騒音の影響は無視され続けてきた。約20年前に生物への騒音の影響が懸念され始めて以降、多くの研究は、騒音が単一種や単一分類群の行動に与える影響を実験室内で記載してきたにすぎず、様々な分類群からなる野外生物群集に対して騒音がどのような影響を与えるのかに関する理解が未だに乏しいからである。そこで本研究では、1)騒音は生物群集のどの要素(e.g.,種数・個体数)に影響するのか、2)騒音への反応は分類群や生活史特性間で異なるのかの2点を解明することを目的とし、2017年夏季に北海道勇払原野において、複数分類群(鳥類・バッタ類)を対象とした交通騒音の野外プレイバック実験を行った。まず、森林と草地それぞれについて、周辺・局所環境が類似した調査区を12か所選んだ。そして、そのうち6カ所では、40mおきに配置した3台の拡声器(80mの“騒音道路”)から録音済みの交通騒音を1~2か月にわたって流した。そして、再生の前後で、“騒音道路”に隣接する2.8ha内の各分類群の種数と個体数を複数回数えた。これらに基づき、当日の発表では、騒音の付加が各調査区の事前の種数や個体数をどの程度低下させるか、低下の程度は分類群・生活史(e.g., 体サイズ、生息地タイプ)によって異なるかを明らかにする。


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