| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


企画集会 T06-4  (Presentation in Organized Session)

気候変動下でのコネクティビティ―と生物間相互作用:植食者と藻場・サンゴ群集

*熊谷直喜(国環研・生物セ), García Molinos, Jorge(北大・北極域研), 山野博哉(国環研・生物セ), 高尾信太郎(極地研), 藤井賢彦(北大・地環研), 山中康裕(北大・地環研)

*熊谷直喜(国環研)、GARCÍA MOLINOS, Jorge(北大・北極域研)、山野博哉(国環研)、高尾信太郎(極地研)、藤井賢彦、山中康裕(北大・地環研)

海洋生態系における気候変動の影響は、陸域生態系と比較して急速に進行する。例えば黒潮や対馬暖流に面した暖温帯域の沿岸では、本来は海藻藻場が生態系基盤を構成しているが、海藻藻場の衰退・消失やサンゴ群集への移行といった生態系の"熱帯化"が数十年スケールのうちに進行している。この直接的要因としては、サンゴの加入による空間をめぐる競争や、南方由来の植食魚類(植食傾向の強い暖海性の雑食魚類)による海藻の食害増大が想定される。さらに、これらの南方系生物の増大は、海水温の上昇と南方から北方へかけて流れる海流によって規定されると考えられる。本研究は、気候変動下における藻場からサンゴ群集への移行プロセスにおける、海水温上昇と海流輸送、植食圧の役割を明らかにするために、長期出現記録に基づく群集変化の検出、およびグラフ理論を利用した分布推移の解析を行った。まず国内沿岸域景観を構成する30種の大型海藻、12種の造礁サンゴ、3種の植食魚類(植食傾向の強い暖海性の雑食魚類)の出現記録(1950-2015年)を収集し分布域の変化を検出した。これらの分布域の変化速度を推定するモデルとして、海水温上昇と海流輸送による複合プロセスを組み込んだClimate velocity trajectory modelを適用した。この解析により、藻場からサンゴ群集への移行のプロセスとして、海水温上昇と海流輸送、植食圧とサンゴとの空間競争の相対的重要性を評価した。


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