| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W01-1 (Workshop)
全ての株が両性花と雄花を咲かせる“雄性両全性同株”は、非常に稀な性表現(被子植物の約1.2%)であるが、世界で約4000種、複数の分類群で独立に進化している。その進化条件については、 資源配分の最適化や花粉親としての成功の促進といった観点から説明が試みられてきた。特に、雌蕊や種子の生産を行わない雄花は両性花と比較して低コストで生産可能であるため、“限られた資源を有効に使うため雄花を生産する” というアイデアは広く受け入れられており、事実雄性両全性同株植物では、資源制限下で可塑的に雄花を生産する種が多く知られている。
しかし、野外集団で雄性両全性同株植物の経験する状況についてより深く考えていくと、“資源制限下で可塑的に雄花を生産する”という戦略が有利になるためには、いくつかの条件があることに気が付く。例えば、雄花生産のフェノロジーに関して、各個体の開花フェノロジーが同調している場合、開花後期に資源が制限され雄花を生産する個体が増加することは、集団中の雄花比を極端に増加させてしまい非適応的となる(雄花を咲かせても受精させる両性花が咲いていない)可能性があるが、その可能性についての研究例はない。また、資源制限下で咲く雄花は両性花と比較して小型(もしくは同程度)なのが一般的であるが、例えば雄蕊の長さが送粉者への花粉付着位置を規定する花の場合には、小型の雄花は送粉者とのサイズマッチングがくずれ非適応的である可能性があるが、その可能性についても研究例はない。
本発表では、雄性両全性同株の一年草であるツユクサCommelina communisを用いて、上記のような非適応的な雄花生産の可能性について研究した例を発表する。調査の結果、ツユクサの場合には様々な仕組みでこれらの不利性を回避していることが示唆された。これらの結果を踏まえ、雄性両全性同株における雄花の進化条件について、一般化にむけ必要なアプローチについて議論したい。