| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W01-4 (Workshop)
固着性であるにもかかわらず雌雄に分かれる雌雄異株植物は繁殖において不利であると言われている。しかし、地球上には一定数の雌雄異株植物が生育していることから、何らかの生態特性によって不利を克服していると考えられてきた。これまでに、雌雄異株植物は、木本や熱帯分布、小さく簡素な花や液果を持つ種・分類群に多いことが知られてきたが、それらの特性によってどのように雌雄異株植物が有利性を得ているのか、あるいは不利を克服しているのかは十分に明らかになっておらず、木本と液果、熱帯分布と液果の間にも相関があるため、実際にどの特性が雌雄異株植物に影響しているのかも十分に分かっていない。また、不利の克服に働いていることが明らかになっている特性もあるが、その特性のみでは、両性植物に追いつくには不十分であることもわかっている(例えば種子生産量;Ibarra-Manriquez & Oyama 1992)。さらに、雌雄異株植物の不利性のみが注目されることが多いが、雌雄異株植物は他殖のみで繁殖するため両性植物に比べ遺伝的多様性が高くなりやすいと考えられる。しかしその有利性の評価が行われた研究は少ない。
発表者は、雌雄異株植物が一生を通して複数の特性で少しずつ不利を克服し、両性植物に追いついているのではないかと考え、樹木の一生の各段階における複数の特性に注目し調べた。本発表では、初めに個体群動態を含む互いに相関のある6つの特性と雌雄異株樹木の関係の解析から、相関関係を排除した効果の評価方法について簡単に紹介する。さらに、個体サイズが小さいうちから繁殖を開始する早熟性と、雌雄異株樹木の関係と、遺伝的多様性と雌雄異株樹木の関係について紹介し、雌雄異株樹木の不利の克服と有利性の獲得について議論したい。さらに今後どのような研究が求められるかについて提案したい。