| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W06-1 (Workshop)
本発表では、淡水性カメ類に対するアライグマの捕食圧に焦点をあてて、広域スケールでアライグマが在来生物に与える影響を評価した研究事例を紹介する。これまでに、アライグマの捕食による在来種ニホンイシガメ(以下、イシガメ)の減少が報告されてきたが、単一の局所個体群を対象にした事例に限られ、アライグマの影響がどの程度広範囲に及んでいるのか不明であった。さらに、河川改修や土地利用の変化、外来のカメ類(クサガメ、ミシシッピアカミミガメ、以下、アカミミガメ)との種間競争や繁殖干渉など、潜在的な減少要因それぞれの相対的重要性の評価は十分ではなかった。そこで本研究は、イシガメの減少に対するアライグマの影響を複数の個体群を含めた広域スケールで検出するため、複数の減少要因の相対的重要性を峻別する共分散構造分析(パス解析)を行った。解析に用いた応答変数は、2011年から2018年にかけて、千葉県において広域で実施した誘引罠による捕獲調査で収集したイシガメの単位罠日当たりの捕獲数(CPUE)、説明変数はアライグマCPUEと外来カメ類2種のCPUE、河川改修及び周辺景観である。イシガメの説明変数として組み込んだ外来カメ類2種のCPUEを説明する統計モデルを階層的に構築し、説明変数としてアライグマCPUE、河川改修、周辺景観を用いた。解析の結果、アライグマ、アカミミガメ、河川改修がイシガメに対して有意な負の影響を与えていること、アライグマによる捕食はクサガメやアカミミガメに対しても負の影響を与えることが示された。広域スケールで生態系影響を検出する手法として、本研究は、環境要因と生物間相互作用を同時かつ階層的に考慮したアプローチの有効性を実証したことから、今後さまざまな生態系における外来種の影響評価に適用されることを期待する。