| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W06-3 (Workshop)
本研究は、アライグマProcyon lotorによる在来鳥類への影響を定量的に評価することを目的として、アライグマの生息密度が異なる地域で鳥類の生息密度を比較した。アライグマによる捕食を受けている可能性のある在来鳥類の代表として、地上あるいは灌木に営巣するホオジロEmberiza cioidesと樹洞営巣性のシジュウカラParus majorを選び、樹上の高い位置の小枝に営巣するヒヨドリHypsipetes amaurotisをアライグマの影響を受けにくいと想定される種として選定した。ホオジロの生息密度は、テリトリーマッピング法により推定し、シジュウカラとヒヨドリについては、アライグマの痕跡調査を行った神社の社寺林にてスポットセンサス法により在不在を調査した。アライグマの生息密度が異なる地域間で、ホオジロの生息適地の存在率を比較したところ、地域間で有意差がないにもかかわらず、ホオジロの生息密度に有意差があった。さらに、ヒヨドリの在確認率は2地域でともに高く(約90%)有意な差は得られなかったが、シジュウカラの在確認率はアライグマの密度が高い地域の方が低く(約15%)、アライグマの低密度地域(約40%)の半分以下であった。以上の結果から、アライグマの捕食にさらされる可能性の高いホオジロとシジュウカラでは生息密度の低下が起きていたことが示唆されたが、より確実な証拠を得るためには、対象種の生息に適した環境を考慮した解析と、継続的な調査が必要である。さえずりによってなわばりの密度を容易に評価できるホオジロは、アライグマの捕食圧をモニタリングする指標種として、広域かつ長期的な評価に生かせるのではないだろうか。