| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W10-3  (Workshop)

工事や整地が行われた後の海浜植生の回復
Recovery potential of coastal dune vegetation following construction and bulldozing

*澤田佳宏(兵庫県立大学, 淡路景観園芸学校)
*Yoshihiro Sawada(Univ.of Hyogo, Awaji Landscape P&H Academy)

 砂浜海岸では、防潮堤の改修工事や海浜の整地によって、植生に強い人為攪乱を与えることがある。強い人為攪乱からの植生の回復ポテンシャルを把握するには、こうした工事跡地で植生を調べることが有効である。
 徳島県鳴門市のS海浜では、1995年~2000年にかけて防潮堤工事が順次進められた。工事では、防潮堤の基礎を地下に埋設するため、海浜植生は一時的に砂ごと除去され、完全に破壊された。この場所で2001年~2003年に植生調査を行った。その結果、植生の平均植被率は工事後1年目はほぼ0%であったが、竣工3年後には10%を超えるまで回復した。海浜植物の種数は、竣工3年後までに急激に種数が増加したが4~6種で頭打ちとなり、工事後9年目でも6種のままであった。出現した海浜植物は近隣海浜の全地点で出現する普通種のみであり、近隣海浜に分布の少ない希少海浜植物(ビロードテンツキ、ハマニガナなど)は竣工9年後でも確認されなかった。以上より、普通種の海浜植物は短期間で回復するが、希少海浜植物の侵入・定着は短期間では困難であることが示唆された。
 兵庫県南あわじ市K海浜では、約40年前に山土を投入して整地をした場所(造成後、駐車場として1年間だけ利用された)と、同じ頃に砂のみをブルドーザーで押し上げて人工的な浜堤を作った場所がある。この2カ所で整地から約40年後に植生調査を行った。その結果、砂のみで造成された人工的な浜堤には、汀線側にコウボウムギ群落、内陸側にハマゴウ群落という、典型的な海浜植生と成帯構造が成立していた。一方、山土を混ぜて整地した海浜では、セイタカアワダチソウなどの優占する群落が成立し、その位置に本来成立するはずの海浜植生は見られなかった。以上より、砂地であれば海浜植生は回復するが、山土が混入した場合には海浜植生の回復が妨げられ、変わって荒れ地雑草群落が成立することが示された。


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