| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W11-1 (Workshop)
捕食寄生性昆虫(Parasitoids)とは,幼虫期を他の節足動物の体内で過ごし,最終的にはその節足動物を殺し,成虫期には自由生活をする昆虫と定義されている(Godfry 1994).こうした節足動物を寄主として利用する捕食寄生性昆虫では,自らの適応度を高めるための産卵場所選択や,寄主の生理状態や行動の操作が,これまで多くの研究で明らかにされてきた.一方,Price(1975)は,寄主は他の節足動物に限定されず,植物の場合もあるとした.しかし,寄生蜂のように他の節足動物を寄主とする昆虫以外に捕食寄生という用語を使うことに対する批判もある.
散布前段階の種子を利用する昆虫には,産み付けられた種子から他の種子に幼虫が移動することなく,1つの種子のみを完全に利用して成長,発育するものがいる.このような場合,雌成虫による産卵場所選択は,幼虫のパフォーマンスや生死に直結する.そのため,雌成虫は子の適応度を高めるために好適な資源に産卵するなどの産卵場所選択が予想される.
また,種子の中で幼虫の成長と発育を完了させる種子食性昆虫の場合,種子散布者によって寄主とともに摂食され,死亡する可能性がある.このような種子食性昆虫では,種子散布者による種子の摂食に対する何らかの対策の存在が考えられる.
そこで本発表では,鳥散布樹種であるモチノキIlex integraの種子を加害するモチノキタネオナガコバチMacrodasyceras hirsutumを例として,種子食性昆虫による産卵場所選択と寄主操作を紹介し,種子を加害する昆虫がいかに種子捕食寄生(Seed parasitoid)であるか示したい.