| 要旨トップ | ESJ66 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W11 3月15日 18:45-20:15 Room I
動物による種子の食害は、重要な植物―動物相互作用系の一つである。しかしながら、送粉や種子散布などの相互作用系に比べ、あまり研究事例が多くない系でもある。植物にとって種子に対する食害は、葉や根など他の器官に対する食害とは異なり、「子殺し」に匹敵するため、種子捕食(seed predation)とも呼ばれ、適応度に直接的に影響する。そのため、植物は種子食害に対して、様々な防衛戦略(種子生産の豊凶、厚い果皮、タンニンの蓄積など)を進化させてきたと考えられている。一方、種子は栄養分が豊富で、動物にとって重要なエサ資源でもある。種子を食害する動物には、哺乳類や鳥類、昆虫類などが知られるが、中でも昆虫類はある特定の植物種の種子に特化し、種子の主要な死亡要因となるものも多い。特に、散布前段階の種子を利用する昆虫には、幼虫が種子内部に潜入し、母樹から種子に供給される栄養分を利用して十分に発育するまで種子内部で生活する、捕食寄生と呼ばれる食害様式で寄主植物と密接な関係を持つものが多い。これらの昆虫類にとって、種子は幼虫の発育に欠かせない資源であるので、利用可能な種子の量や質は適応度に大きく影響する。そのため、昆虫は植物の防衛戦略に対抗して、様々な形質(休眠延長、長い口吻、タンニン耐性など)を進化させてきたと考えられている。したがって、植物―種子食性昆虫の系はお互いに生き残りをかけた熾烈なせめぎ合いが繰り広げられる系であると考えられる。本集会では、種子食性昆虫と植物の相互作用系に関する温帯や熱帯での研究や、数理モデルを用いた研究を紹介しつつ、種子食性昆虫研究の面白さや今後の課題について議論したい。
コメンテーター:東樹宏和(京大・生態研)
[W11-1]
モチノキを巧みに利用する種子食性オナガコバチ”モチノキタネオナガコバチ”
Macrodasyceras hirsutum, a seed parasitoid wasp exploiting Ilex integra in clever manners
[W11-2]
東南アジア熱帯雨林におけるフタバガキ科の一斉結実と種子食性昆虫
General flowering of dipterocarps and seed predatory insects in Southeast Asian rainforests
[W11-3]
樹木豊凶と種子捕食者の休眠延長戦略の共進化動態
Coevolution of masting in trees and extended diapause of seed predators