| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W12-1  (Workshop)

微生物群集研究の近年の傾向:解析と得られたパターンの解釈について
A review of  recent microbial community analysis: How to interpret pattern of diversity

*北川涼(横浜国立大学)
*Ryo Kitagawa(YNU)

近年のメタバーコーディング技術の発達に伴い、これまで断片的な情報に留まっていた微生物群集についての情報が飛躍的に増大した。これによって、微生物群集の多様性の記載的な知見の蓄積、多様性の規定要因やメカニズム、さらには生態系機能と関連性など、その興味関心が広がりつつある。このような研究では、植物群集の多様性メカニズムを解明するために発達してきた、多様性パターンからその規定要因を読み解く手法が用いられることが多い。とはいえ、植物群集を対象として発達してきた解析手法を微生物群集にそのまま応用するには、多くの課題が残る。例えば、土壌微生物群集構造の規定要因を探る研究では、非生物的環境要因、空間構造に加えて、地上部の植物群集の構造などが説明変数として用いられ、Variation partitioning などの手法でそれらの要因の相対的重要性を検証する研究が行われている。しかし、植物群集に対して微生物群集は、群集を定義するスケールが曖昧である。したがって、仮に双方の群集構造に相関関係が認められたとしても、その関係性の解釈は難しい場合がある。また、植物群集を対象にした解析やパターンを解釈するための理論は同一の資源を利用する水平群集を前提に提唱されたものが多い。しかし、メタゲノミクスによって定量化された群集には、多様な資源を利用する生物が含まれる可能性がある。したがって、このような群集に水平群集を前提に提唱された理論や解析を適用すると間違った解釈を招くかもしれない。本発表では、近年触れる機会の増えた微生物群集データに対して、植物などの水平群集を対象とした解析を適用する際の課題を整理する。そして、理論と解析手法の観点から微生物群集のパターン解釈について検討することを目的とする。


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