| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W16-5  (Workshop)

行き先はhistoricalかnovelか?撹乱後の生態系の行方
Where does an oceanic island ecosystem go after disturbance, historical or novel?

*吉田勝彦(国立環境研究所)
*Katsuhiko Yoshida(Nat Inst Environ Studies)

 小笠原諸島を始めとする多くの海洋島では外来生物による在来生態系の撹乱が大きな環境問題となっている。そのため、外来生物の駆除事業が各所で行われており、小笠原諸島でもヤギの駆除は父島を除いて終了している。外来生物の中には侵入先で大繁栄し、生態系の物質循環に深く食い込むものがある。小笠原諸島の外来ヤギ、ネズミはその代表例の一つであり、そのような生物を駆除することは生態系の物質循環を大きく改変することが考えられる。そのため、駆除後に生態系が元の状態(historical)に戻るのか、それとも外来生物による撹乱が生態系の回復力を上回り、別の状態に移行するのか、その新しい状態は持続可能なのか(novel)を明らかにすることは重要な課題である。そこで本件研究ではシミュレーションを行って、外来生物駆除後の生態系変化を解析することを試みた。この目的のためには、撹乱前のhistoricalな状態を再現する必要があり、そのためには海洋島の生態系の形成過程から再現しなければならない。そこで本研究では、島が形成され、低い確率で生物が自然移入し、島内で進化する、という海洋島の生態系進化プロセスを再現するモデルを作成した。さらにこのモデルを用いて、外来生物の島への侵入と駆除のシミュレーション、つまり、島の生態系の形成が始まってから一定時間後に外来生物を導入し、さらに一定時間経過後に外来生物を駆除するシミュレーションを行った。また、外来生物導入から駆除までの時間を変えた条件でシミュレーションを行い、駆除後の生態系がどのような状態に移行するのか、つまり、historicalな状態に戻るのか、それとも全く別の状態に移行するのか、そしてそれらの間に何らかの閾値があるのか、について議論する。


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