| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W17-1  (Workshop)

一つの求愛行動が単婚性のメスを多婚性に変化させる
A courtship behavior that makes monandrous females polyandrous

*嶺川一喜, 石川幸男, 松尾隆嗣(東京大学)
*Kazuyoshi Minekawa, Yukio ISHIKAWA, Takashi MATSUO(The University of Tokyo)

 メスの生涯に行う交尾回数が1回なのか複数回なのか、その交尾システムの違いはどのようなメカニズムによって生じるのだろうか。メスの交尾頻度に影響に及ぼす要素を検討することは交尾システムの進化プロセスを解明することに繋がるだろう。テナガショウジョウバエDrosophila prolongataのオスはメスの両翅を激しく叩く求愛行動leg vibration(以下LV)を行う。LVはテナガショウジョウバエしか行わない種特異的な求愛行動であり、メスの交尾受容性を高める効果を持つ。本研究では、一度交尾をしたメスはLVできるオスとの再交尾を受け入れる一方で、LVできなくしたオスとは最初の交尾から14日経過した後でも再交尾しないことを発見した。つまり、テナガショウジョウバエの交尾システムはLVの有無によって変化するのである。さらに実験を行った結果、メスの子孫数は再交尾をしたとしても増加しないこと、オスの精巣由来ペプチドによって引き起こされる再交尾抑制は数日しか効果がないことも明らかになった。これらの結果から、テナガショウジョウバエにおいてメスは本来単婚性である方が自身にとって適応的であるのだが、その交尾システムはオスの都合によって変更を余儀なくされている可能性が示唆される。
 本集会では、テナガショウジョウバエが魅せるユニークな求愛行動とそれによって再交尾するか否かがドラスティックに変化するメスの交尾システムをみなさんに紹介したい。


日本生態学会