| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W17-2  (Workshop)

不妊虫放飼法で放飼された不妊メスは本当に役立たずなのか?
Infertility females released in the field are not really useful in Sterile Insect Technique ?

*日室千尋, 池川雄亮, 本間淳(琉球産経(株))
*Chihiro HIMURO, Yusuke IKEGAWA, Atsushi HONMA(Ryukyu-Sankei Co. LTD)

 不妊虫放飼法(SIT)とは、不妊化した害虫を野外に大量放飼することで、野生虫の雌雄間の交尾を阻害し、次世代の害虫個体群密度を減少させる防除法である。しかし、不妊雄のみでなく、不妊雌も放飼した場合、不妊虫同士が交尾することで不妊雄が野生雌と交尾する機会を失うため、不妊雌の放飼は防除効果に負の影響を及ぼす可能性がある。不妊雌放飼の防除効果については、Knipling(1955)をはじめ、多くのモデルで予測されてきたが、モデルごとに結果が異なっており、実証データが必要となっている。沖縄県では、サツマイモの世界的な害虫であるアリモドキゾウムシ、およびイモゾウムシのSITによる根絶事業に取り組んでいる。そこで、この両種について、不妊雌がSITの防除効果に負の影響を及ぼすかどうかを実験室において調べた。方法は、野生雌雄のみの区、野生雌雄に不妊虫を加えた3処理区(不妊雌雄を加えた区、不妊雄のみの区、不妊雌のみの区)を作成し、サツマイモとともに静置し、1週間自由に交尾させ、虫を除去した後、8週間後に次世代数を測定した。その結果、どちらの種においても、不妊雌雄を加えた区と不妊雄のみの区の間には有意な差はなかったことから、不妊雌がSITの防除効果に負の影響を及ぼしていないことが明らかとなった。また、アリモドキゾウムシの場合、興味深いことに不妊雌のみの区においても、野生雌雄のみの区に比べて、有意に次世代数が減少することが明らかとなった。


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