| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W19-1 (Workshop)
観測による生態学的データの取得には多くの苦労がともなってきた。そもそも観測対象として生物を選んだ時点で困難がつきまとうのだが、生態学がターゲットとする森林・湿地・岩場・高山・海洋などのフィールドで、学術研究に値する正確なデータを取得することに多大な時間と労力をかけてきた生態学者は多いことだろう。そのようなフィールド観測自体が生態学の醍醐味だと感じることも確かにあるが、新しい技術や考え方でデータ取得が容易になり研究がはかどるならば、我々はそれも受け入れるべきではないだろうか。
この集会のイントロダクションとして、まずビッグデータ科学の意義について概観する。我々が受けついできた生態学者の「伝統」が、果たして最適なものであったか考えてみよう。そして、観察し、仮説を立て、検証するという科学の手続きが、ビッグデータにもとづく「データ駆動型科学」でどのように成り立つかを検討する。
次に、ビッグデータ科学の応用例を調べていく。たとえば、ディープラーニングなどのソフトウェアの進歩によって、従来は使われることのなかった情報の抽出が可能となる。それは、疲れを知らず、安定した精度でずっと観測を続けてくれる助手ともいえる。ドローンや人工衛星、デジカメなど観測に用いられるハードウェアの高性能化と相まって、従来は検証がむずかしかった現象を定量評価することができるようになり、それは生態学の発展に大いに貢献すると期待されている。日進月歩の情報科学の知見を採り入れることで、生態学の研究はさらに実りの多いものになると信じたい。