| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W23-1 (Workshop)
生物の形態は、環境に対して定常的だったり、ランダムに変異したり、あるいは、方向性の変化を示したりする。生物の体は形態的に統合されているので、体の複数部位の形態に変異性があるならば、各部位の変異パターンには何らかの関係が存在する。幾何学的形態計測学は、1990年代以降、形態の解析手段として生態学で定着してきた。複数形態部位の関連性のある変異パターンを調べる方法は、2000年代から、次第に使われるようになり、データ解析を支援する道具として、幾つかのフリーソフトがWeb上で配布されている。
本講演は、幾何学的形態計測学で用いられている、複数形態部位の変異パターンの関連性を調べるための解析法を駆使した、エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の形態可塑性をテーマとした実験研究の話題を提供する。まず、一般に使われるの解析法(RV, PLS)を道具として用いた研究の話、次に、道具の仕組みの理解から発展させた研究の話を紹介する。
エゾサンショウウオ幼生は、高密度で共食いの発生とともに、集団内に形態の変異が生じる。そのため、低密度集団と高密度集団をとおして、個体の形態は様々に変異する。頭部と鰭の形態変異が顕著である。この2つの形態部位の変異の関連性を生態学的文脈に沿って解析た。そして、高密度で生じた2タイプの、頭部形態と鰭形態の変異の関連は、共通規則に基づき、両タイプはその規則の両極端に位置づけられ、低密度の個体の形態変異規則と異なると結論した。しかし、解析法の意味を線型代数学、多変数幾何学で吟味すると、この結論に至る前に探求すべき、生物学的に興味い深い疑問があることに気づいた。その探求のための解析法を平易に説明、紹介し、解析結果の一部を考察する。