| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W26-1  (Workshop)

環境DNAメタハプロタイピングの概要・アルゴリズム・応用例
Overview, algorithms and applications of environmental DNA meta-haplotyping

*田辺晶史(龍谷大学)
*Akifumi S Tanabe(Ryukoku Univ.)

環境DNAメタハプロタイピングとは、PCR産物を高スループットシーケンサで網羅的に解読し、1塩基違いの配列をも区別して把握するものである(核DNAのハプロタイプフェージングとは無関係)。高スループットシーケンサは読み間違い率が従来のサンガー法に比べてずっと高いためそのようなことは困難だったが、シーケンサが出力する配列の品質値やコピー数から、ポアソン分布を仮定して統計的に真の配列と読み間違い配列を区別する手法が提案され、十分に可能であることがわかってきた。しかし、この方法ではアバンダントな配列と1塩基しか違わないレアな配列は、たとえ本当に存在するものだったとしても、アバンダントな配列由来のエラーのある配列として判定されてしまうことが多く、解読深度を上げても解決しない。そこで、これらの手法とは全く異なる原理に基づく方法を開発し、真の配列がわかっている3つのデータにおいてうまく動作することを確認した。また、メタハプロタイピングやメタバーコーディングでは分析過程においてサンプル間のコンタミネーションが起きやすく、その検出・除去(デコンタミネーション)も必要である。デコンタミネーションはネガティブコントロールサンプルを利用してコンタミネーションの起きやすさを推定することで行うことができる。さらに、メタハプロタイピングやメタバーコーディングで主に用いられるイルミナ社製シーケンサでは多サンプルをマルチプレックスで解読するために、付加するインデックス配列が入れ替わる(インデックススイッチあるいはタグジャンプ)現象がある。この問題に対しては、両端に2つのインデックスを付加した上で未使用の両端インデックスの組み合わせを用意し、その組み合わせが検出される割合からインデックススイッチの起こる確率を推定する手法が提案されている。本講演では、これらの手法・アルゴリズムを概説し、実際に河川魚類群集に適用した例を紹介する。


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