| 要旨トップ | ESJ66 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W26 3月17日 17:45-19:15 Room A
水中に排出され漂っている魚類のDNA(魚類環境DNA)を検出することで、その付近の水域に棲息している魚類の検出、定量ができる可能性が示され(Minamoto et al. 2012, Takahara et al. 2012)、魚類環境DNAに対して高スループットシーケンサによるPCR増幅産物の網羅的解読(アンプリコンシーケンシング)と塩基配列に基づく分子同定(メタバーコーディング)を適用することで、魚類を網羅的に検出、相対定量する技術(魚類環境DNAメタバーコーディング)が確立した(Miya et al. 2015, Ushio et al. 2018)。この方法では、付近の水域に生息する魚類のミトコンドリア12S rRNA領域約200bpの塩基配列を網羅的に取得することができ、この領域の分子同定用参照塩基配列も急速に整備されつつある。ただ、この領域には種内の変異は乏しいため、種内の集団遺伝構造の調査には今のところ用いられていない。しかし、種内の変異が十分に取得可能な領域が解読できるプライマーさえあれば、魚類相の把握だけでなく各魚種の遺伝的多様性も把握できるはずである。
環境DNAのアンプリコンシーケンスから遺伝的多様性を正確に把握するには、高スループットシーケンサの解読精度が問題になる。現在の高スループットシーケンサは解読エラーが多いため、互いに1塩基しか違わないハプロタイプの存在を把握するのは容易ではない。しかし最近になって、解読品質値とコピー数に基づいて、統計的にエラーのある配列と本当に鋳型中に存在すると思われる配列を区別できるDADA2(Callahan et al. 2016)などが開発され、技術的に解決できる目処が立ってきた。本集会では、これらの技術を用いた環境DNAメタハプロタイピング技術の概要を解説し、実際に野外の集団に適用した例を紹介する。
[W26-1]
環境DNAメタハプロタイピングの概要・アルゴリズム・応用例
Overview, algorithms and applications of environmental DNA meta-haplotyping