| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-01  (Oral presentation)

性比と他殖/自殖性の共進化:マングローブ・キリフィッシュを例に
Coevolution of sex ratio and outcrossing/selfing propensity, illustrated by mangrove killifish

*山口幸(奈良女子大学), 巌佐庸(関西学院大学)
*Sachi YAMAGUCHI(Nara Women's Univ.), Yoh IWASA(Kwansei Gakuin Univ.)

雌雄同体と雄が共存するシステム、androdioecyは動物には非常に稀で、脊椎動物では、不安定な生息地に生息するマングローブ・キリフィッシュでだけ報告されている。雌雄同体個体は、自分で作った卵を自らの精子で受精させる自殖か、雄との交配による他殖か、のいずれかで子を作る。雌雄同体同士の交配はできない。自殖による子は、近親交配の悪影響により、他殖による子よりも生存率が低い。しかし雌雄同体個体は雄に出会えなければ他殖はできない。他殖の有利さと、雄を生産することの有利さは、互いに影響しあう。

本研究では、雄を作る比率と雌雄同体個体の自殖性という2側面の進化的結合ダイナミックスを調べる。具体的には、他殖志向の雌雄同体、自殖志向の雌雄同体、および雄の3表現型で構成される集団を考える。他殖志向の雌雄同体はまず雄を探し、出会えば他殖を行う。しかし一定期間内に雄に出会えないと自殖により繁殖する。自殖志向の雌雄同体は最初から自殖で繁殖する。他殖志向の雌雄同体と雄とが共存する集団と自殖志向の雌雄同体のみの集団とが、ともに局所安定という、進化的双安定を示すことがある。交尾期が短く、生殖遅延のコストが大きく、雄の探索効率が悪く、近交弱勢が弱いと、自殖志向の雌雄同体が進化しやすい。

モデルは、雄が全くいない集団か、もしくは雄の比率が20%以上の集団かのいずれかが進化することを示す。これは雄の比率は5%前後というキリフィッシュの野外研究とは矛盾する。これを説明するために、パラメータ範囲の探索や、近隣の大生息地から周辺の自然集団へ個体が流れ込みについて調べた。その結果、(1)野外での雄比率のデータは、純粋自殖の集団と雄率が高い集団とを混ぜてサンプルしたため、(2)雄率が高い集団から純粋自殖の集団に移入が起きたため、(3)雄が雌雄同体個体に強制交配を行うため、などが必要なことがわかった。


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