| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-02 (Oral presentation)
協力的な社会において、仕事を個体の間でどのように配分するかは、社会生物学の重要な側面である。アリのいくつかの種のワーカーには、個体ごとに巣内の仕事と巣外の採餌とにそれぞれ特化し、しばしば採餌に特化する個体が体サイズが大きい場合(caste polyethism)がある。他の多くのアリでは、全員がこれらの仕事をするが、羽化後の日数により、若齢個体が巣内の仕事をし、老齢個体が巣外の採餌を行う(age polyethism)。これらの仕事の配分パターンのうち、いずれが巣全体としての効率を高めるかを数理的に計算した。その結果:2つの仕事にともなう死亡率の違いが大きく、採餌活動にともなう死亡率が高い時で、最適な体サイズがそれほど違わないときには、採餌を老齢個体が行う齢による配分が有利である。逆に、死亡率の違いはそれほど大きくなく、2つの仕事を行う上の効率的なサイズに大きな違いのある時には、個体ごとの特殊化が進化することがわかった。この結果は、適応の基準として、定常的な巣において繁殖虫を作り出す速度を用いた場合にも、次々とワーカーを作り出すことで指数的に増大するその速度を用いた場合にも、同じ結論が得られた。