| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-04  (Oral presentation)

パートナー選択に基づく相利共生の安定性に関する一般モデル
A generic model on the stability of mutualisms based on partner choice

*江副日出夫(大阪府立大学)
*Hideo EZOE(Osaka Pref. Univ.)

相利共生(異種間の互いに正の相互作用)において、各個体が自分に協力的な共生相手を選り好みすること(パートナー選択)は、非協力的な相手による一方的な搾取を防ぎ相利共生を維持するメカニズムのひとつと考えられてきた。しかし、パートナー選択によって非協力的な共生者が排除されることで共生者個体群内の多様性が減少していくと、それに伴ってパートナー選択の利益は減少してそのコストに見合わなくなり、パートナー選択をする個体がいなくなって最終的に相利共生が解消してしまうというパラドクスの可能性が指摘されている。この問題を解決するための理論的研究は複数提出されているが、各々の仮定が異なるため、どれが普遍的な結果なのかを理解することは難しい。この研究では、パートナー選択に基づく相利共生に関する一般的なモデルを構築し、その平衡点の普遍的な性質について調べた。このモデルにおいて、宿主個体群はパートナー選択する系統としない系統、共生者個体群は宿主に協力する系統と協力しない系統のそれぞれ2系統ずつからなると仮定する。各々の系統の頻度の時間変化を連立レプリケータ方程式によって記述し、最初にこのモデルの共存平衡点が中立安定であることを示す。次に、平衡点の値がパラメータの変化によってどのように変化するかを調べる。これにより、パートナー選択の効率が上がるとパートナー選択する宿主の頻度はかえって減少するという非直感的結果が得られる。さらに、このモデルに付加的な要素を付け加えた場合の平衡点の安定性の変化を調べる。共生者の突然変異は偏りの有無に関わらず平衡点を収束安定化させること、宿主および共生者系統の負の頻度依存性は平衡点を収束安定化させるが正の頻度依存性は平衡点を不安定化させることを示す。


日本生態学会