| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-05 (Oral presentation)
ギルド内捕食とは,共通の資源を利用する消費者のギルドにおいて,ある消費者が別の消費者を捕食することである。食う側の消費者はギルド内捕食者,食われる側の消費者はギルド内被食者とよばれる。古典的な数理モデルは基底資源の生産性が高い時にギルド内被食者が排除されることを予測する。しかし,この予測に反し,実証研究では,生産性の高い環境におけるギルド内捕食は普遍的であり,この相違は長い間生態学者を悩ませてきた。この講演では,II型の機能の反応を仮定し,被食者と資源の餌としての好適度(profitability)がギルド内捕食の動態に及ぼす影響を調べる。資源と被食者がともにギルド内捕食者にとって好適な餌である時は,古典理論の通り,高生産性環境でギルド内被食者が絶滅する。しかし,基底資源がギルド内捕食者にとって好適ではない時には,ギルド内捕食者は資源のみに頼って存続することができないので,ギルド内被食者を絶滅させることができず,ギルド内被食者とギルド内捕食者は共存する。基底資源の好適度は高く,ギルド内被食者の好適度が低い時には,どちらの資源も好適である時と同様に,高生産性環境でギルド内被食者の絶滅が起こる。しかしさらに生産性が高まると,ギルド内捕食者が絶滅するリミットサイクルが現れ,ギルド内被食者が絶滅するリミットサイクルと双安定となる。最後に,資源もギルド内被食者も好適度が低い時には,2種が共存する安定なリミットサイクルは,生産性が上がるとともに,境界面上のギルド内捕食者が絶滅するリミットサイクルに吸い込まれ,初期値によらずギルド内捕食者が絶滅する。このように,高生産性環境で絶滅するのはギルド内被食者とは限らず,基底資源とギルド内被食者の餌としての好適度によって,ギルド内捕食者が絶滅することも,どちらかが絶滅する状態が双安定になることも,両者が共存することもある。