| 要旨トップ | ESJ67 自由集会 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 MEW01  3月7日 17:00-18:30 Room F

ビッグデータの森で迷ったら畑に出よう:データ駆動型農業研究に学ぶ生態学の未来
Ecologists trail footprints of Agronomy on the ridge of the Big Data Mountain

藤井智久(農研機構九州沖縄農業研究センター虫害グループ), 須藤正彬(農研機構果樹茶業研究部門茶害虫ユニット)
Tomohisa FUJII(KOARC, NARO), Masaki SUDO(Institute of Fruit Tree and Tea Science, NARO)

近年の計測機器や分子生物学的手法の発達で、生態学者は多量の観測データを入手できるようになったが、個体群・群集生態学はアイデンティティの危機に直面している。自然生態系の構成種の多くは基本的な生活史情報が不足しており、さらに(畑と違って)整然と区割りされた野外操作実験は困難を極める。仮にこれら実務上の問題が解決されようとも、群集集合ルールや個体群動態の決定メカニズムについてシンプルな法則性を導けるかが怪しい。データが自ら性質を語り、将来を予測するならば、我々生態学者が育んできた理論と生物への知識と愛に、果たして出番はあるか。
大規模データの収集では農学に一日の長がある。特に応用昆虫学分野では、害虫の発生予察事業による広域・長期の個体群データが蓄積され、被害予測等に活用されてきた。殺虫剤抵抗性の発達は作物への経済被害に直結するため、これまでも生物検定法による圃場個体群の抵抗性発達を管理してきたが、次世代シーケンシングを活用した抵抗性原因遺伝子の同定を基に、抵抗性遺伝子モニタリング体制が構築されつつある。また低コスト・省力的な圃場管理のため、土着の天敵や送粉者の利用効率を向上させる技術開発が進んでおり、ネットワーク科学の応用現場として注目されている。
農学では個別の領域の目的に沿ったデータが日々大量に蓄積されてきた。これらを今まさに生態学の眼で俯瞰し、次世代の農業技術開発は勿論、基礎科学としての生態学をパラダイムシフトさせる人材が求められている。本集会では昆虫学のバックグラウンドを持つ3名の農業研究者に、ゲノム、生物間相互作用、景観という多様なスケールで展開される、AI利用・データ駆動型研究の先進事例を紹介していただく。混迷の時代に生態学と農学が再び手を取り合い、次代の革新をともに目指したい。

[MEW01-1]
昆虫ゲノム科学におけるデータ解析 *横井翔(生物機能利用部門, 農業情報研究センター)
Data analystics in the Entomological Genomic Science *Kakeru YOKOI(IAS NARO, RCAIT NARO)

[MEW01-2]
農地周辺の訪花昆虫ネットワークの構造と評価 *岸茂樹(農研機構 農情研)
Measuring structure of flower-visitor network in and around cultivated farmland *Shigeki KISHI(RCAIT NARO)

[MEW01-3]
土地利用データに基づく斑点米被害予測モデルとハザードマップによる広域管理への応用 *田渕研(東北農研)
Area-wide pest management by using a rice damage predictive model based on land use data and the model-driven hazard map *Ken TABUCHI(TARC)


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