| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S06-5 (Presentation in Symposium)
気候変動や土地利用改変による生物多様性の減少が深刻さを増すなか,市民による生物の広域モニタリング(市民データ)への期待が世界的に高まっている。高山生態系を象徴とするライチョウについて,生息状況のモニタリングはこれまで各地の専門家により行われてきた。しかし,調査者不足・高齢化と高額な調査費用から,将来的な調査の継続性が危ぶまれている。長野県では,専門家による生息状況モニタリングを補完することを目的として,2011年と2012年に北アルプスの51の山小屋にライチョウポストを設置し,ライチョウの目撃情報収集を目的とする一般登山者へのアンケート調査を行った。2015年からは、ライチョウサポーターズ養成事業の登録者からの情報収集を行っている。市民のボランティア精神に依存した日和見的な市民調査では,調査誤差を最小にするために調査手順・同定能力が明確化・画一化された体系的な調査とは異なり,データに含まれるノイズやバイアスの評価が重要である。講演では,2011年と2012年にライチョウポストに集められた市民データをもとに,(1)ヒナの個体数減少率のモデル化と(2)点過程モデルを用いた空間的調査バイアスの補正と分布予測の結果について紹介し,登山者データの有効性と限界について議論したい。