| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S07-4  (Presentation in Symposium)

渡り鳥による鳥インフルエンザウイルスの国内侵入パターンについて
Introduction pattern of avian influenza virus by migratory birds into Japan

*大沼学(国立環境研)
*Manabu ONUMA(NIES)

2004年にハシブトガラスから高病原性鳥インフルエンザウイルスが分離された。その後、国内では断続的に高病原性鳥インフルエンザウイルスが野鳥から分離され、2018年3月までに300個体以上の野鳥から高病原性鳥インフルエンザウイルスが分離されている。分離されたウイルスの亜型は、2004年から2011年までがH5N1亜型、2014年から2015年がH5N8亜型、2016年から2018年がH5N6亜型であった。ウイルスが分離された鳥類種の中には、クマタカ、ハヤブサ、ナベヅル、マナヅル、ヒシクイといった環境省レッドデータブックに掲載されている絶滅危惧種も含まれている。そのため、高病原性鳥インフルエンザは養鶏産業への経済的な被害をもたらすばかりではなく、生物多様性へも影響を与えかねない感染症となっている。国内において野鳥から高病原性鳥インフルエンザウイルスが分離されたことを受け、環境省は2008年よりカモ類の糞便や死亡野鳥から採取した試料を利用して鳥インフルエンザウイルスの保有状況を調査している。国立環境研究所は、動物検疫所(農林水産省)とともに遺伝子検査機関としての役割を担ってきた。これまでに、この調査結果を解析しウイルスの国内への侵入パターンには時期的な規則性があることを明らかにした。また、シギ・チドリ類を対象に、ウイルスの保有状況調査を実施し、カモ類と比較してウイルスの保有率が低いことを報告した。さらに、国立環境研究所は、蓄積した野鳥におけるウイルス保有状況のデータを解析し、野鳥版鳥インフルエンザリスクマップおよび猛禽類版鳥インフルエンザリスクマップを作成した。今回の発表では、国立環境研究所が、実施している鳥インフルエンザウイルスに関連する研究、特に、ウイルスの生態学的側面に関する研究例を紹介する。


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