| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S10-2 (Presentation in Symposium)
北海道洞爺湖中島(面積約5km2)に導入されたニホンジカ個体群は保護下で爆発的増加し、高密度状態の維持により、体サイズの小型化や妊娠率の低下、初産齢の上昇がみられた。2012年から2013年にかけて、間引きを行い、個体数密度は約55頭/ km2から10頭/ km2前後まで減少した。その後は毎年捕獲を行い、10〜30頭/ km2で維持されたため(2019年9月1日から2020年1月10日に行われたREM法による密度推定は22頭/ km2)、体サイズと繁殖特性の改善がみられた。体重は2000年から2014年以降にかけて12〜37%増加した。間引きの前後で、3歳以上の妊娠率は約70%から100%まで上昇し、初産齢は4歳から3歳まで低下した。しかし、2014〜2017年の11〜3月にかけての捕獲個体の胃内容分析の結果、主な食性は樹皮・枝33%、落葉28%、堅果・液果15%だったことから、食物資源としての植生は十分回復していない可能性があるため、生態系回復のためには捕獲を強化し、シカの個体数密度をさらに低下させる必要があると考えられた。