| 要旨トップ | ESJ67 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S10 3月5日 17:00-20:00 Room D
シカ類が世界規模で増加して自然生態系に強い影響を与えており、カスケード効果や森林植生に不可逆的な影響を与えることが知られているが、シカと生息地の相互関係の定量的な研究や生態系機能に着目した研究は乏しい。またシカが生態系へ与える影響の研究はシカ柵を用いて数多く実施されてきたが、これらの研究は景観(ランドスケープ)レベルでの研究には適していない。ランドスケープレベルでのシカの間引きに伴う植生回復の研究は、世界的にみても限られており、いずれの場所でも嗜好植物の回復は遅いか回復しないという結果にとどまり、複数の生態的指標の検討は行われていない。
国内でも、ニホンジカの過採食により、植生の系統的多様性の低下、シカの生活史特性(体重と繁殖力)の低下、栄養塩の物質循環過程の変化、複数昆虫類がシカの高密度化による下層植生の存在によって正の反応と不の反応を示す分類群にわかれること、などが明らかにされてきた。しかし、低密度化が過増加以前の健全な生態系の維持回復をもたらすかについては不明であるため、自然保護区における生態系維持回復事業の目標設定が困難であった。そこで、本シンポジウムでは、長期にわたり個体数とシカ柵を用いた植生モニタリングが実施され、かつ生息密度の低減が実現している阿寒国立公園、洞爺湖中島、神奈川県丹沢山地等を対象に、低密度化による生態系への影響緩和がどのような時系列でどのように出現するのか、不可逆的か否かについて、シカの生活史特性、シカ柵の機能、植生、シードバンク、土壌流出、土壌生態系、複数の昆虫群の反応比較と生態系機能に着目し、地域特性も考慮して、生態系レジリエンス機能の評価手法の検討と生態系モデルの構築に向けた議論を行う
[S10-1]
過採食が爆発的増加個体群の生活史形質に与える影響
Impact of chronic over browsing on life history traits of an irruptive large herbivore population
[S10-2]
低密度に対するシカ個体群の反応:体サイズと繁殖特性の改善
Reaction of deer population parameters to low population density: improvement of body size and reproductive characteristics
[S10-3]
シカの採食に対する植生のレジリエンス~シードバンクの役割と衰退~
Resilience of vegetation to deer grazing: insights from seedbank evaluations
[S10-4]
ニホンジカとクマイザサが稚樹の成長と生存に及ぼす影響
Effects of sika deer (Cervus nippon) and dwarf bamboo (Sasa senanensis) on growth and survival of tree seedlings
[S10-5]
シカの生息密度が食糞性コガネムシの生態系機能に与える影響
Effect of deer population density on the ecological function on dung beetles
[S10-6]
集水域スケールの植生保護柵設置8年後の植生および土壌物理性の変化
Changes in vegetation and soil characterstics after 8 years catchment scale deer exclusion