| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S10-4 (Presentation in Symposium)
ニホンジカ(Cervus nippon)個体群の管理を行い、森林の更新を図っていくためには、ニホンジカの生息密度低下後の稚樹の反応を明らかにする必要がある。我々は、阿寒摩周国立公園の冷温帯針広混交林に1995年に設置した柵内外の調査区において、生息密度がピーク時の27.1±10.7頭/km2から9.5±2.5頭/km2に低下後の2009年~2011年8月に、糞粒密度、クマイザサ(Sasa senanensis)被度、光量子密度、樹高及び樹種が稚樹の生存率及び成長に及ぼす影響を評価した。稚樹の摂食確率は、糞粒密度の高い調査区で高かった。糞粒密度が増加するとクマイザサ被度は有意に低下した。稚樹の生存率は、摂食とクマイザサ被度に負の影響を受けた。稚樹の成長は摂食により負の影響を受けた。我々の研究は、稚樹の生存に対し、ニホンジカの摂食による直接的な負の効果とクマイザサ被度の低下による間接的な正の効果を示した。糞粒密度が2.0粒/m2以下の場合、予測された稚樹生存率は0.65-0.85であった。これらの結果から、管理者は、現状と同程度あるいはより低密度にニホンジカ個体群を維持し、摂食の強度と森林植生の変化をモニタリングすること、特にクマイザサの影響を考慮すべきことが示唆された。