| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S15-2 (Presentation in Symposium)
細胞内で時々刻々と変化する細胞骨格やオルガネラの振舞いを取り扱う細胞生物学分野において、顕微鏡画像の評価は基本的かつ重要な研究手段である。従来、顕微鏡画像を評価する場合、研究者の目視に基づく定性的な解釈に留まることが一般的であった。しかし、このような従来法は、(1) 研究者の主観に基づくため客観性に欠け、(2) 多数の画像を評価する場合には人的コストが膨大になるという問題点が指摘されていた。
これらの問題を解決すべく、我々は植物細胞生物学分野の研究現場の立場から画像解析技術によって細胞特徴の定量や分類を実現する技術開発に取り組んできた(Higaki et al. 2010 Plant J, Higaki et al. 2012 Sci Rep)。また、一連の研究開発の過程で顕微鏡・MRI・CTなど多様な撮影装置から取得される大量の画像データを短時間で分類判定する汎用的生物画像分類ソフトウェア「CARTA(カルタ)」を共同開発した(Kutsuna and Higaki et al. 2012 Nature Communications, Higaki et al. 2015 Bioimages)。さらに本技術を応用し、広域顕微鏡画像から任意の細胞内構造あるいは細胞腫を高効率・低コストで検出する技術を開発した(Higaki et al. 2014 Plant Morph, Higaki et al. 2015 Sci Rep, Hirai et al. 2019 Plants)。本発表ではこれらの研究事例を紹介するとともに、細胞レベルの表現型の定量化の現状と今後について議論したい。