| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S20-3 (Presentation in Symposium)
中・高緯度地域に生息する昆虫は、生存に適した季節に成長し生殖するが、不適な季節にはそれらを一時停止した休眠に入る。多くの昆虫は、「日長」あるいは「夜長」に反応する光周性を用いて季節に適応している。これまでに、光周性の結果もたらされる表現型(成長・生殖、あるいはその抑制)の内分泌機構について研究が進んだ。また、光周性機構には、概日時計(以下「時計」)遺伝子、時計細胞が関わることが示されてきた。しかし、脳内の時計システムがどうやって日長を測るか(測時機構)については解かれていない。私たちは、光周性の測時機構に興味を持ちち、大豆の害虫であるホソヘリカメムシRiptortus pedestrisを用いて生殖休眠を調節する光周性の分子・神経機構について研究を行っている。ホソヘリカメムシのメス成虫は長日条件では卵巣を発達させるが、短日条件では卵巣発達を抑制し休眠に入る。これまでに、RNA干渉実験からperiodを含む複数の時計遺伝子の発現が光周性に必要であること、神経解剖学実験から光周性機構の入力部(受容器)や出力部(内分泌系)と連絡するニューロンが明らかとなってきた。本講演では、光周性の光受容器である複眼から脳への光入力経路と、ホソヘリカメムシPERIODに対する抗体を用いて染色された6つのPERIOD免疫陽性細胞群について紹介する。これらの経路、細胞のマッピングにより、脳内の視葉前方基部にある付属視髄(accessory medulla)が、光周性測時機構の場ではないかと考えている。