| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S20-5  (Presentation in Symposium)

脊椎動物の季節適応機構の解明にむけて
Towards understanding the seasonal adaptation mechanisms in vertebrates

*吉村崇(名古屋大・WPI-ITbM)
*Takashi YOSHIMURA(Nagoya Univ.)

渡り、換羽、冬眠など、動物の様々な生理機能や行動は季節によって変化する。季節の存在する地域ではほとんどの動物の繁殖活動は、次世代の生育に適した春から夏をめがけて行われる。我々はこれまでウズラ、ハムスター、ヤマメなど、洗練された季節応答を示す動物に着目した比較生物学的なアプローチによって、脊椎動物が日長の変化を感知して、繁殖活動を開始する仕組みを明らかにしてきたが、動物の行動の季節変化を司る分子基盤については理解が進んでいない。
ゲノム情報やゲノム編集技術を容易に利用でき、小型でスループットの高いメダカは、行動の季節変化の分子基盤を理解する上で優れたモデルである。我々はメダカの行動が季節によって変化することに着目して研究を行ったところ、眼のロドプシン類の発現が季節によって大きく変動することで、色覚や光感受性がダイナミックに変化していることを明らかにした。さらに動物は繁殖期になると天敵などに対するストレス応答をあげることで危険な状況を回避することが知られていたが、この仕組みに長鎖ノンコーディングRNAが関与していることを明らかにした。また外部環境が厳しい冬季には、ヒトだけでなく、様々な動物がうつ様行動を示し、厳しい環境に適応していることが知られているが、その仕組みは明らかにされていない。近年、創薬の分野ではゼブラフィッシュやメダカなどの小型魚類が複雑な中枢性疾患を理解するための優れたモデルとして注目を集めている。ゼブラフィッシュは明瞭な季節性を示さないため、明瞭な季節応答を示すメダカを用いて行動テストを行ったところ、冬季に社会性が低下し、不安様行動が上昇することを見出した。メタボローム解析、トランスクリプトーム解析、ケミカルスクリーニングを行いたケミカルゲノミクスのアプローチから冬季のうつ様行動の発現機構の一端が明らかになってきたので、それらの取り組みも含めて紹介する。


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