| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S21-3 (Presentation in Symposium)
沖縄島には非常に魅力的な固有種が多く存在する一方で、多くの外来種も定着している。グッピーとカダヤシも外来種であり、ともにカダヤシ科の卵胎生魚類である。この2種は原産地が異なるが生息環境や形態が類似している。一般に、近縁種など生態ニッチが近い種同士が2次的に遭遇した場合、競争排除により片方が駆逐されるか、共存する場合は棲み分けが起こると考えられる。この2種は競争関係にあり、先に導入され一旦沖縄島の淡水環境に広く分布を拡大したカダヤシが、後から導入されたグッピーによって駆逐されつつあることが先行研究で明らかになってきた。現在では同所的に2種が観察される地点は極めて少なく、観察されたとしてもグッピーが優占する場合が殆どである。我々は、この2種の置き換わりは水質などの環境要因では説明できない証拠 をつかんでいた。そのため、沖縄島でカダヤシがグッピーに排除されつつある仕組みを解明するため、これまで注目されなかったメカニズムに目を向けた。
近年注目されている種間競争メカニズムの一つとして、繁殖干渉がある。繁殖干渉は特に、形質が似た種や近縁種間で見られ、多くの場合雄が間違って他種の雌に配偶行動を行うことで次世代数の低下を引き起こす。我々はまず、この2種で繁殖干渉が生じているか検証するため、室内飼育実験を行った。その結果、予想通り、カダヤシはグッピーのオスが存在すると出産数が大幅に減少し、繁殖干渉が生じていることが示された。この繁殖干渉は非対称であり、グッピーはカダヤシから繁殖干渉を受けず、出産数の減少は見られなかった。また、1年を通して個体数の推移を調査した野外飼育実験の結果からも、カダヤシ集団はグッピーオスの存在により個体数の増加が抑えられることが示された。これらのことから、繁殖干渉は近縁種が出会った場合に排他的分布となるメカニズムの一つとして、強力に働く可能性があると考えられる。