| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S26-2  (Presentation in Symposium)

既存の森林長期観測サイトをつなぐネットワーク構築:気候変動の影響検出に向けて
Networking forest long-term ecological research sites in Japan: exploring impacts of climate change on tree communities

*吉川徹朗, 竹内やよい, 角谷拓(国立環境研究所)
*Tetsuro YOSHIKAWA, Yayoi TAKEUCHI, Taku KADOYA(NIES)

 気候変動が生態系に甚大な影響を及ぼすことが懸念されている現在、森林群集の変化と気候値の変化量との関連を明らかにすることは、陸域生態系保全のうえで急務である。森林における気候変動の影響の顕在化には時間がかかると考えられるため、その解明には長期の観測データが必要である。現在国内では複数のサイトで長期観測が行われており、一部のサイトでは温暖化の影響とみられる森林群集の顕著な変化がすでに報告されている。しかし気候変動とそれに対する森林群集の応答は、空間的な変異が高いと考えられるため、全国をカバーする複数サイトの長期データを統合して森林群集変化を包括的に捉える枠組みが求められている。
 こうした課題に対して日本長期生態学研究ネットワーク(JaLTER)が中心となり、ネットワークを形成する研究機関を巻き込んで、日本列島における既存の森林観測サイトのネットワーク構築を進めている。各地の研究者グループと共同でデータ収集を進めており、一部のサイトについては再調査によりデータを拡充している。また学術論文や報告書に公表されている森林データのマイニングも行っている。現在までで全国約250地点における森林の時系列データを収集した。
 本講演では、観測ネットワーク体制の現状を紹介し、こうしたネットワークにより可能になる解析の概要について紹介する。具体的には、群集内で暖地性樹種が増加し、寒地性樹種が減少する「好熱化」と呼ばれる現象を検出し、これにより森林群集のレジリエンスを評価する枠組みを提案する。その上で将来的な森林モニタリングやデータ統合のあり方についても議論を喚起して、意見を共有することを目指したい。


日本生態学会