| 要旨トップ | ESJ67 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S26 3月8日 9:00-12:00 Room C
生態学的過程は長期にわたって進行し、環境勾配の影響も受ける。時間的・空間的に稀な現象がしばしば、生態系や生物群集に決定的な影響を与える。これが、長期生態研究や観測網の必要性に対する教科書的な説明である。
一方で、長期観測網の整備と維持、研究施設間の調整には、多大な労力・予算を要す。日本の生態学はいまだ長期観測網を整えるための予算獲得に成功していないばかりか、一つの研究サイトで長期観測を続けることすら年々大変になっているという声を耳にする。こんな状態で、長期観測網は生態学にとって本当に優先すべき課題なのだろうか?もしそうなら、どうすれば実現するのか?
このシンポジウムでは、長期観測網の成果と構想について様々な生態系タイプ・生態学分野の話題を取り上げる。まず大手氏には、一つのサイトの集水域観測の成果をご紹介いただく。樹木群集の分野では、「毎木調査」というある程度標準化された手法で全国多数の研究サイトが長期観測をしている。吉川氏には、それらの観測をつないで気候変動についての大きな問いに答える構想をご紹介頂く。こうしたボトムアップアプローチと対比をなすのが、省庁事業としてトップダウン的に構築された観測網である。曽宮氏には、環境省のモニタリングサイト1000事業の成果として、生物多様性変動についての生態系タイプ間の共通点・相違点をお話し頂く。堀氏には、全国多数の水産研究機関による海洋観測網の成果と展開を紹介して頂く。最後に近藤氏から、環境DNAという比較的新しい生物多様性観測手法による広域観測網の可能性について語って頂く。
以上の講演を通じ、生態学における長期観測網の威力と困難さを議論したい。このシンポジウムは、JaLTER(日本長期生態研究ネットワーク)と日本生態学会大規模長期生態学専門委員会の共同提案による。
コメンテーター: 柴田英昭(北大・北方圏フィールド科学)
[S26-1]
桐生試験地における長期観測: 集水域研究の強みとは
Long-term observations in Kiryu Experimental Watershed: advantages of the catchment study
[S26-2]
既存の森林長期観測サイトをつなぐネットワーク構築:気候変動の影響検出に向けて
Networking forest long-term ecological research sites in Japan: exploring impacts of climate change on tree communities
[S26-3]
生物多様性観測の為のモニタリングサイト1000/過去・現在・未来
Monitoring site 1000 project for Biodiversity monitoring/past, now and future
[S26-4]
水産研究機関における海洋観測網:成果と今後の展開
Oceanographic observation network in fisheries research institutes: achievements and future development
[S26-5]
環境DNAを利用した長期生態系観測網構想:高度生態情報社会への展望
The eDNA Monitoring Network Plan: a Foundation for Advanced Eco-Information Society