| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S29-2 (Presentation in Symposium)
生物標本を用いた集団遺伝解析を実施する際、標本中の塩基配列の断片化(多くは200bp未満)、また塩基中の脱アミノ化に伴う塩基解読ミスについて対策をする必要がある。単純反復配列の多型を用いるマイクロサテライト解析は、PCR産物長が短くとも情報量が失われず、断片化したDNAでも解析が可能である。また、塩基配列のデータを直接使用しないことから、標本中の塩基配列の脱アミノ化に伴う塩基解読ミスのリスクがない。このように、マイクロサテライト解析は生物標本を用いた集団遺伝学的研究に際し適した手法であるといえる。本研究では、博物館で特に収蔵点数が多い昆虫標本において、PCR産物長の短いマーカーを用いたマイクロサテライト解析を実施した。その結果、新たに開発したマーカー9座(PCR産物長60-180bp程度)において、約30年前に採取された標本の8割で解析を成功させることができた。
本講演では、標本を用いたマイクロサテライト解析の方法や注意点などについて解説するほか、本技術により明らかとなった草原性絶滅危惧チョウ類の一種コヒョウモンモドキの遺伝的多様性・有効集団サイズの時空間的な変化についても紹介したい。さらに、現在研究を進めている、DNAを長期保存できる昆虫標本作製手法についてもあわせて報告する。