| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S29-5  (Presentation in Symposium)

標本を対象としたシーケンスキャプチャー:寄生蜂の超保存領域を一例に
Sequence capture from specimens: A case study focusing on Ultraconserved Elements of parasitoid wasps

*中臺亮介(東大)
*Ryosuke NAKADAI(Univ. Tokyo)

様々な生きものにおいてゲノム情報が集積され、分類群間・分類群内で共通する領域が近年明らかとなってきている。これらの情報を用いて、幅広い生物種間で共通する遺伝子領域を対象としたプローブを作成し、一度に多数の遺伝子を収集する方法(シーケンスキャプチャー)が系統学を中心として実施されている(例えば、動物:Lemmon et al. 2012 Syst. Biol. 61: 727–744、Smith et al. 2014 Syst. Biol. 63: 83–95、植物:Johnson et al. 2019 Syst. Biol. 68: 594–606など)。さらに、これらの方法は、新鮮なサンプルを対象とした場合だけではなく、一定程度、断片化が進んでいる標本においても適応可能である。このことから、なるべく多くの種を含んで解析を行いたい系統学において網羅性を高めるためにシーケンスキャプチャーは重要な役割を果たしている。本発表では、シーケンスキャプチャーの概要を説明し、最後に寄生蜂の超保存領域(Ultra-Conserved Elements: UCEs)を対象とした実際の研究について、経験や注意点などを交えながら紹介する。実際に寄生蜂を対象とした結果、数十年前の標本からも多くの配列を収集することができた。標本を利用したシーケンスキャプチャーによる研究は、系統学において今後も重要な位置を占めることが期待される。


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