甲虫には、角や大あごのような頭部の武器とともに、長い前脚をもつ種が多く見られる。しかし、頭部の武器と前脚がどのように機能的に関連しているかは分かっていなかった。ワリックツノハナムグリのオスは、長い前脚と頭部に1対の角を持つ。これらの形質の機能を調べるために野外での行動観察を行った結果、オスは交尾後の配偶者防衛において、ライバルのオスと戦う際に前脚と角を用いることが分かった。前脚は闘争の初期の儀式的行動で、角はエスカレートした直接的な闘争においておもに用いられていた。闘争のうち約6割の例において、前脚を使った儀式的闘争のみで勝敗が決まった。室内における闘争実験の結果、大きな前脚や角を持つオスほど闘争に勝ちやすいことが分かった。また、アロメトリーの解析からも、それぞれの形質が性淘汰の影響を受けていることが示唆された。これらの結果から、本種の角と長い前脚は、闘争の異なる段階での機能に特殊化して進化してきたことが明らかとなった。