| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W04-1 (Workshop)
道総研・林業試験場では,発災直後から現地調査を行い,植物の生育基盤として重要な崩壊斜面の表層部分の土壌物理性について調査を行ってきた.これまで28斜面を対象に,表層0~50cmまでの土壌硬度および透水係数を調査し,結果について緑化事業における植栽基盤整備マニュアル(2000)および植栽基盤整備技術マニュアル(2009)の判定基準とそれぞれ対応させた.その結果,土壌硬度と透水係数の両方の値が植物の生育基盤として良好と判定される地点が1地点,どちらかが良好と判定された地点が20地点,両方が不良と判定された地点が7地点だった.
本研究では,発災後1年目の木本植物の自然回復状況の実態を把握し,これまで行ってきた崩壊斜面の土壌物理性の判定結果との対応関係について検討することを目的とした.調査は,予め土壌物理性の判定結果がわかっている崩壊斜面を対象に,2019年7月に厚真町内の3地区(北部・南部・東部地区)で行った.それぞれに1×20 mの調査ラインを2-4本設定し,各ラインに出現した実生の種数・個体数を調査した.また,出現した実生の季節消長を把握するため,7月に出現していた個体にマーキングを行った後,10月まで追跡調査を行った.
その結果,全体で出現頻度が最も多かった種は,順にカラマツ,カンバ類,ケヤマハンノキだった.追跡調査の結果,実生の季節消長は4か月間で大きく変化しなかった.実生の密度は,植栽基盤としての土壌物理性の判定結果と対応しており,土壌物理性が良好な地点では密度が最も高く,不良と判定された地点では最も小さかった.それ以外の地点では,地区間やライン間で種数や個体数が異なっており,崩壊後の環境条件の違いや,崩壊を免れた母樹の種や量の違いが,種数や個体数の違いに影響している可能性が考えられた.