| 要旨トップ | ESJ67 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W04 3月4日 17:00-18:30 Room G
日本国内の森林域では,過去5年間にマグニチュード6以上の大地震(北海道胆振東部地震・熊本地震など)や総降水量1000ミリ以上の集中豪雨(平成30年7月豪雨など)に起因する大規模自然撹乱が相次ぎ,森林の斜面崩壊が広域にわたり同時多発的に発生した.林業被害が発生した地域では即急な森林再生が望まれていると同時に,斜面崩壊がもたらす森林生態系の公益的機能への影響評価は迅速性・広域性・正確性の向上が求められている.しかし,木本植物が自然回復する過程において,実生の定着や生残・生長に大きな影響を与える表層の動態は,崩壊後の経過時間によってばらつきが大きい.また,崩壊斜面が大規模かつ複数で発生したことで,表層はより複雑な動態を示す.このため、従来の生態学的知見を基礎とした緑化技術など森林再生手法の提案が困難な状況である.
一方,近年急速に普及している小型UAVを用いた多視点ステレオ写真測量は,空中写真による3次元形状の復元によって広域の地形や植生を効率的に把握できる. さらに,RTK (Real Time Kinematic) GNSSが直接統合されたRTK-UAVが登場し空中写真の位置情報の精度が飛躍的に向上したことで,数cmスケールの観測が実現した.さらに,マルチスペクトルカメラが小型UAVにも搭載可能になった.これらの情報を組み合わせることで,撹乱後の広域かつ詳細スケールの地形・植生モニタリングや,森林再生手法への応用可能性が見えてきた.
本集会では,2018年9月に発生した北海道胆振東部地震後の森林植生の現況について報告し,現地調査で活躍した最新の観測技術について解説する.実際の活用事例として,崩壊直後の微細な表層動態の解析や,崩壊斜面に更新したカラマツ実生の生理特性とマルチスペクトル画像との対応関係等を紹介する.
以上の発表に,小林真氏(北大FSC)と,野口麻穂子氏(森林総研・東北)よりコメントを頂きながら,さまざまな議論を行う予定である.
[W04-1]
北海道胆振東部地震で発生した崩壊地における木本の実生と生育状況
Seedling emergence of woody species after the landslide area caused by the 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake
[W04-2]
RTK-UAVを用いた崩壊地斜面における表層動態の観測
Monitoring of topography and vegetation using RTK-UAV in the landslide area caused by the 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake
[W04-3]
崩壊斜面におけるカラマツ実生の光合成特性とマルチスペクトル画像の関係
Relationship between photosynthesis and multi-spectrum image of larch saplings in collapse slopes